甘い恋じゃなかった。



思い切って、その部屋の扉を開けた。


綺麗に片付けられた部屋。というより何もなくなっていた。荷物はしっかりまとめて出て行ったらしい。


こうして何もなくなったガランとした部屋を前にすると、桐原さんとの毎日はまるで嘘だったような、夢だったような。そんな気持ちになる。



「…あー、広い…」



ゴロンと部屋の真ん中に寝転んでみた。なんだか以前より天井が高く感じる。広く感じる。



…グウ、とお腹が鳴った。



こんなに虚無感に満たされていても、お腹はしっかりとすくらしい。そんな事実に少し感心してしまう。



「…甘いもの、食べたい」



< 269 / 381 >

この作品をシェア

pagetop