甘い恋じゃなかった。



ノロノロとフローリングの上に、上半身だけ起こした。


…甘いもの、食べよう。


だけどミルフィーユには、いけない。行く勇気がない。

桐原さんの私の告白に対する返事は、分かっている。だけどそれを、改めて告げられに行く勇気は、まだとてもじゃないけどない。



もう少しだけ時間が欲しい。



そしたらきっと桐原さんのことはしっかりと過去の恋愛にして、前に進めるようになるから。きっとなるから。だから今は。



「…ボヌール、行こうかな」



逃げます、私。



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