甘い恋じゃなかった。




「好きだから、お前のこと」


「………!!」



ズルい。

こんな不意打ち、心臓が止まりそうになるじゃないか!!



恐らく真っ赤な顔をして黙り込む私を、桐原さんが覗き込むようにして見る。



「うわ、茹で蛸かよ」


「だっ誰のせいだと…!」


「俺のせいだろ?」



顔を上げた私の顎をクイ、とつかみ、逃げれなくして桐原さんが意地悪く笑う。



「俺お前のその顔、けっこう好きかも」


「はぁ?…ん、」




夜が明けて、はじめてのキスは


桐原さんの飲む、ほんのり苦いアイスコーヒーの味がした。




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