甘い恋じゃなかった。
「お前って本当…いつもいつも…」
頭上から桐原さんの呆れたような声。続いて大きなため息。
ポン、とサンタクロースの帽子の上から手をのせられると、そのままグシャグシャとかき乱された。
「ち、ちょっと…」
「バッカじゃねーの」
グイ、と膝をかがめて、桐原さんが顔を近づける。不意に目の前に現れたその整った顔に、心臓がドクンと揺れた。
呆れを含んだ茶色い瞳に、涙目の私が映っている。
「いつも一人で勝手にストーリー作って、勝手に完結させてんなよ。俺を置いてけぼりにするな」
「だ、だってでも」
「栞里と抱き合ってたっていうのは誤解だ。まぁ抱き着かれたけど…すぐに引き離した。お前を悲しませるようなことしたくなかったし」
「…え…」
そ、そうだったの?でも、ということは、やっぱりお姉ちゃんはまだ桐原さんのことが…
「…別に栞里も、俺のことがまだ好きなわけじゃねーよ」
私の心を読み取ったかのように桐原さんが続ける。
「ただ目の前の現実から逃げたかっただけだろ。俺と栞里の関係はもう、過去のものだよ。ちゃんと幸せになれって伝えたし」
…そうだったんだ。
心のどこかでホッとした自分がいた。
そんな私を見て目を細めた桐原さんが、頭の上に置いてあった手を私の頬に移動させて、そっと撫でる。
「…そう思えるようになったのはお前のおかげだ。明里」
ま、また不意打ちで名前を…!!