甘い恋じゃなかった。




それから数時間後の、営業終了後のミルフィーユ。


後片付けを終えた後、桐原さんに「ちょっと待ってろ」と命じられ、私は大人しくカウンター席に座り待っていた。

店長とお姉ちゃんは早く眠りたいと、クリスマスを乗り切った労いもほどほどにして帰っていった。


桐原さんも早く帰りたいはずなのに、一体どうしたんだろう?



不思議に思いながら、店内に飾られたまだピカピカと輝いているツリーを眺めていると、厨房から桐原さんが何やら白い箱のようなものを持ってきて、私の前に置いた。


それには真っ赤なリボンがかけられている。…まるでプレゼントのような。



「…これは?」

「お前、前に言ってただろ。子供の頃はサンタクロースが来てくれるのが一番楽しみだったって」

「…まぁ言いましたけど…」

「だから、もう大人のお前に、俺からプレゼント。サンタクロースじゃねぇけどな」

「…え…」


思わず桐原さんの顔をまじまじと見つめてしまう。だって。ということはつまり。


「これ、私にクリスマスプレゼントってことですか!?」

「だからそう言ってんだろ。早く開けろよ」


桐原さんにぶっきらぼうに促され、私はドキドキしながらリボンをといた。


ゆっくりと箱を開けて、思わず大声で叫びだしそうになった。



中に入っていたのは、一面のフルーツと、そのフルーツの中でプレゼントを手にしているサンンタクロースの姿。


「これ…っ、け、ケーキ!?」

「そ。クリスマスケーキ。…お前のために作った」


うそっ…!!



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