甘い恋じゃなかった。
いちごにキウイフルーツ、パイン、みかん、ラズベリー…
色とりどりのフルーツの上にちょこんとのっかっているサンタクロース。
「…これ…マジパンですか?」
「そ。はじめて作ったよ、こんなの」
感動する私は言葉も出ない。
そんな私を不思議そうに覗き込む桐原さん。
「…あんま好みじゃなかった?」
「…ちがっ…これは、が、がんどう、じでじまっで…!」
「はっ?おま、泣くなよ!?」
突然号泣し始めた私に狼狽える桐原さん。ティッシュを取りにいこうとした桐原さんの腕を、思わずつかんだ。
「ありっ…ありがとうございます…まさか桐原さんが、クリスマス前、すごく忙しかったのに、私のためにケーキ作ってくれるなんて…!!」
「…泣かれるとは予想外だったけどな」
涙でぼやけているせいだろうか。
カウンターの向こうにいる桐原さんが、なんだかすごく優しく笑っているように見える。
「…ほんと、ケーキバカ」
そして私の頬に手を伸ばすと、グイ、と親指で涙を拭った。
「ケーキバカっていうか…桐原さんバカになってしまいました…!」
「なんだよ、それ」
は、と桐原さんが声に出して笑った。
「じゃ、もうずっと俺から離れられねぇな」
「…え…」
「俺が幸せにしてやるよ。明里」