何度でもあなたをつかまえる
attacca subito
attacca subito~休まずにすぐ次へ
(アッタッカ スービト)

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……また……ヤッてしまった……。


まだ夜明け前のひんやりとした空気に、橘家の長男、千歳は不本意な目覚めを迎えた。


けだるい上半身を起こすべく、そーっとそーっと腕を引き抜く。

……腕枕なんて甘いモノじゃない。

酔いに任せて、快楽を貪り合い……そのまま眠ってしまった……。

おそらく変な体勢で長時間寝入っていたのだろう。

右腕と、左足が少し痺れているようだ。


参ったな……。


すーすーと寝息を立てて眠る天使のような顔を、恨めしく睨み付けた。


……どうして、こいつは……こんなにも……俺の好みの顔をしているのだろう。

普段は理性で止められても、酔うとタガがはずれてしまう。

せめて、本気で抵抗してくれたらいいのに……と、自分勝手なことを思いながら、千歳はすっくと立ち上がった。

尿意に多少焦って、裸体にパジャマの下だけを履くと、トイレへと向かった。


廊下を歩いていると、くしゃみが1つ……2つ……3つ……。

風邪引いてしまったかな。

ついこの間まで、エアコンなしではとても眠れなかったのに……もう秋か……。

鼻をぐずぐず言わせながら、千歳は用を足し……そのまま自室に戻ろうとして……はたと思い出した。


あいつも素っ裸だったな。

せめて、蒲団を掛けてやらないと……風邪を引いたら大変だ。

確か、今夜は都内でライブだと言っていた……。

喉は商売道具だろうに、大丈夫かな?

本腰入れて頑張ってる割には、プロとしての自覚が足りないというか……。



尾崎雅人が我が家に住まい始めて半年。

妹の恋人……なんだが……。


「どうして、こんなことに……。」


千歳の心に湧き上がった想いそのままの言葉が、聞こえてきた。

驚いて、千歳は顔を上げた。

まだ雅人が爆睡している和室から、真っ青な顔で現れたのは……千歳の母。


しまった!

見られてしまった!

……妹の婚約者と言っても差し支えのない男との情事の生々しい形跡を!!!


「お母さん……。」

ばつの悪い表情で立ち尽くすことしかできない。


母親は、ぶるぶると怒りに震えているようだ。


……まずい。

非常に、まずい。


……いや、まあ、俺はいい。

本当は男が好きなことなんか、とっくの昔にバレてる。

むしろ、それでも、一度は家のために結婚したことを誉めてもらいたいくらいだ。

お義理で抱いた元嫁の産んだ女の子が……俺の子じゃなかったという、笑えないオチで善行も台無しだったけど。
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