溶ける部屋
お互いさま
その日、あたしと健は同じ部屋で眠ることになった。


あたし1人にしておくと郁美から攻撃されるかもしれないと、健が心配してくれたからだった。


夕食の時にもお風呂の時にも姿を見せなかった郁美が、今何をしているのかわからない。


申し訳なさと恐怖があたしの中に渦巻いているのがわかる。


「またボーッとしてるけど、大丈夫か?」


ベッドに座って窓の外を見ていると、健にそう言われて振り向いた。


お風呂上がりの健はまだ少し髪が濡れていて、色っぽく感じられる。


「外を見てただけだよ」


あたしはそう言って再び窓へと視線を向けた。


部屋の影響からなのか、健を直視することができない。


くっついて眠った事だってあるのに、今日はやけに意識してしまう。


「外なんて真っ暗だろ」


健がそう言い、あたしの隣に座る。


あたしと同じシャンプーの香りがしてきて、顔がカッと熱くなるのを感じた。


「真っ暗だけど、なにか変化がないかなって思って」


健を直視することができないから、そんな嘘をついた。


「ふぅん? でも、もう寝ようぜ。明日またあの部屋に入るんだからさ」


そう言い、健が電気を消した。


途端に周囲は暗くなり、あたしの心臓がドクンッと大きく跳ねた。


異様なまでに緊張していることが、自分でもわかる。
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