溶ける部屋
☆☆☆

翌日。


目が覚めると違和感があって、あたしは周囲を見回した。


すぐ隣に健の寝顔があり「わっ!?」と、声を上げて飛び起きてしまった。


健はあたしの声に目を開けて「なんだよ、もう」と、文句を言っている。


そう言えば昨日あたしは健と一緒のベッドで寝たんだっけ。


思い出して途端に恥ずかしくなってしまう。


健に寝顔を見られてなければいいけれど……。


「もう少し寝かせろよ」


健はそう言うと、あたしの体を引き寄せた。


「きゃっ!?」


再び布団の中に引き込まれて健と密着する。


健に心音が聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい、近い距離。


「ちょ、ちょっとそろそろ起きなきゃ」


今何時なのか、時計のないこの建物の中じゃわからないけれど、窓の外はもう明るくなっている。


みんな起きて朝食を作っているかもしれない。


「なんだよ、いいだろ明日花」


あたしを抱きしめる腕に力を込める健。


これじゃ部屋を出る事もできない。


困っていると、健は再び寝息を立て始めてしまった。


その音を聞いていると、なんだかあたしまで眠くなってきてしまう。


布団の中は心地いいし、健の腕の中は安心する。


気が付けば、あたしはまた眠ってしまったのだった。
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