溶ける部屋
溶ける
気が付けば、あたしも郁美も深い眠りについていた。


色々と考えてみたけれど、やっぱりあたしは健の事が好きで郁美に譲る気はなかった。


朝の光がさしこむ室内であたしは郁美の寝顔を見ていた。


郁美の頬には涙の痕がついている。


あたしの背を向けた後、1人で泣いていたのかもしれない。


その寝顔を見ていると、郁美が目を開けた。


目の前にいるあたしに状況が理解できないのか、瞬きを繰り替えす。


「おはよう」


そう言うと、郁美はようやく「……おはよう」と、寝ぼけた声で返事をした。
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