溶ける部屋
☆☆☆

2人でリビングダイニングへと向かうと、トシ以外の全員がそろっていた。


「おはようみんな」


声をかけると伶香が不安そうな表情を浮かべた。


「なにか、あった?」


郁美が聞く。


「トシがいないんだ。どこにも」


返事をしたのは健だった。


「どういう事?」


あたしが聞き返す。


「朝起きて、昨日の事もあるから心配になってトシの部屋を覗いたんだ。でも、いなかった」


「他の部屋も探した。だけどどこにもいない」


弘明が健の続きを口にした。


「どこにもって……そんなハズないでしょ?」


あたしは首を傾げて面々を見た。


しかし、みんな一様に左右に首をふるだけだった。


「それなら、散歩でもしてるんじゃない? 自分の気分を落ち着かせるために」


「外も、一応は確認してみた」


健がそう言った。


だけどどこにもトシはいなかったのだそうだ。
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