天国の不動産





朝7時半の僕の家。




朝食を食べ終わった妹が、僕の仏壇に手を合わせていた。




「じゃ、お兄ちゃん行ってきます」




言ってろうそくの火を消したかと思うと、元気に家を出た。




「行ってらっしゃーい」




台所の奥から慌てて母親が見送りにくる。




この4年間、誰も僕のことを忘れなかったことに、ほっとする。





正直かなりビビっていた。




父と妹を見送るなり、母は家の掃除を始める。




散らかっていた僕の部屋は母の手によって、綺麗な僕の部屋と化していた。




そして4年間そのままとっておいてある。




今日も母は僕の部屋から掃除を始める。




生きていた頃はうるさいと思っていた掃除機の音が、心地よく感じる。





< 97 / 114 >

この作品をシェア

pagetop