memory〜紅い蝶と私の記憶〜
え?なんで驚いてるの?


私、驚かせるようなこと言った?


…何も言ってないよね?


「お兄ちゃん?」


「…っあ、わりぃ。少し昔を思い出してさ」


「昔?」


「ああ。…昔1回だけ家族で水族館に行ったことがあるんだけどさ、その時に同じことを星南が言っててな。少し驚いたんだ」


家族で水族館に…。


その時の私も今の私と同じことを言ったんだ。


「記憶をなくしても、星南は星南なんだって。再認識できたよ」


〝星南は星南〟


そうだ、記憶がなくなったって、私は私なんだ。


例え記憶が戻らなくても…私は新しい星南として生きていく。


「星南ー!もうすぐイルカショーが始まるって!」


「ほら、星希も早く行きますよ。…美鈴が今か今かと目を輝かせながらウロウロしていますので」


幸助先輩の言葉に美鈴ちゃんを見ると、早く早くと言葉が聞こえそうなくらい目を輝かせている。


イルカ、好き…なんだね。


聞かなくてもわかるくらいキラキラしてますね。




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