memory〜紅い蝶と私の記憶〜
「思い出したのか…?」


お兄ちゃんの問いに、首を横に振る。


思い出してないよ。


今回はいつもより記憶の映像が多かっただけ。


それ故に、混乱してしまっただけなの。


だから…そんな悲しそうな、辛そうな顔をしないで?


「でもいいんだ。私は今を生きることにしたから!」


「星南がそれでいいと思うなら、俺たちは何も言わない。星南を支えるだけだ」


「お兄ちゃん…」


ありがとう。


恥ずかしくて口には出さないけど…。


記憶がなくて、不安で悲しくて辛くて。


でもお兄ちゃんがいて、みんなと、高松くんと出会うきっかけをくれたから。


だから私は今の私であることを、過去を気にしない、今を生きるとみんなの前でいうことができたんだ。


ちらっと高松くんを見ると目が合った。


高松はニコリと笑うと。


「よかったね」


そう言って私の頭をぐしゃと撫でた。


それがすごく嬉しくて。


それと同時に、胸が高鳴った。







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