los episodios de suyos
 噂によれば、父親や部下達と共に少しは実戦を経ているらしい。射撃の腕前と素早い身のこなしは相当なものだと聞いている。これは、対面が益々楽しみだ。知らず知らずの内に上がっていたらしい口元をナタリーに指摘され、俺もまだまだだなと息をついた。



『ところで群様。僭越ですが、そろそろ愛人のお一人でもお作りになった方がよろしいかと存じますよ。年老いたばあやの小言と受け取られるかもしれませんがね。』

『あぁ、分かってる。だが、生憎そういう文化には興味がなくてな。どうも性に合わねぇんだよ。』

『……本当に珍しいお方だこと!では、言い直します。早く奥様を見つけて下さいね。』



 失礼しました、と告げてクリーム色の髪を揺らしながら、ナタリーが部屋を後にした。イタリアに来て八年、チェーロのボスになってから三年になるが、どうも大勢の女を相手にする気にはなれない。

 寄ってくる方も寄ってくる方だが、相手をする“こちら側”の人間には首を傾げたくなる。愛を与えるのももらうのも、己が決める唯一の人で良いではないか。女の数が権力を決めるだなんて唱える奴が居たら、俺は間違いなく嗤(わら)ってやる。勿論、そいつの目の前で。
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