los episodios de suyos
『――ガルシア、どう?』

『お嬢様が純白とは、多大な違和感を覚えずにはいられませんが……』

『こんな時くらいお世辞を言いなさいよね。アタシだって、深紅のドレスを着たかったわよ。』



 お色直しが楽しみだわ、と呟いて、チェーロの屋敷で働いているメイドにドレスの裾を持ってもらいながら、あの赤い道へと踏み出していくお嬢様。その腕を旦那様がしっかりと掴んで進んでいくと、場内からは感嘆の声が上がった。



『ボス、本当に綺麗よねぇ……あんた、最後くらい素直に誉めても良かったんじゃないの?』

『だよなぁ。それにしても、群さんも今日は特別キマってんなぁ。』



 ソニアとグレイが、ひょっこりと自分の両側に現れる。ドレスアップした二人とは違い、いつもの黒ずくめの自分。お嬢様が人のものになってしまうのに、特別なスーツやネクタイ、ハンカチなんて身に付けたくない。そんな小さな抵抗も、そろそろやめにしなければならないのだろう。



『……お色直しが終わったら、例のプレゼントをお二人に渡しに行きましょうか。』

『そうだな!気が早いって、ボスは怒るだろうがな。』

『でも、御小柴さんは喜んでくれるんじゃない?』



 まだ、報告すらもらっていないのだけれども。これが自分にできる、精一杯の祝福だから。いつか生まれてくるであろう二人の宝物に、彼女が好きな色の、小さな小さな靴下を。



fin.
→後書き
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