くれなゐ症候群
たとえば、晴れわたった夏の空に、ふと出現する一点の黒い雲。
みるまに、その影をひろげてゆく。

急速に心を覆いつくす、不安。



地面のなかほどに、ぼっかり口を空けた、おおきな穴がある。
冷たく乾いた土の肌がのぞく。巨大なアリ地獄を思わせた。

噂にだけ、聞いたことがあった。


「おおきな穴だね」
沈黙をうめたくて、口をひらく。


「むかし無計画に地下水くみあげたせいだとか、地盤工事がテキトーだったからとか、言われてるけど。
そんで、地面が抜けてああなちゃったんだと」


翔一の言葉は、さすがに中学生らしい。
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