くれなゐ症候群
バンドの演奏も、ボーカルも、人の歓声も、すべてが遠ざかる。

カヲルがしゃべる声だけが、鼓膜を通過して意識にとどく。


「カヲルさんは、どうしてここに・・・?」


「忘れられないのかな、翔一のことが。
いつかひょっこり、顔出してくんないかなって。
もう五年もたってるのに、いまだにこうして通ってる」


「修二くんとも仲いいんですか?」
千香は、気になってしかたないようだ。


「顔見知りていどだよ」

その返事に、安堵している自分がいる。
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