僕らの空は群青色
新しい父親は渡に優しかった。日曜は家族サービスに四人で出かけることを好み、近所の目もはばからず団欒を楽しんだ。何枚も写真を撮った。頼んでもいないのに、新しいゲーム機やゲームソフトをいくつも買ってくれた。

しかし、渡が好きなのは死んだ父だけだった。
母は変わってしまったと思った。味方はいない。

他人など余計好きになれない。いつしか義父は懐かない渡に優しくするのをやめた。
一緒に暮らしだして半年も経たないうちに、父母は渡を持て余すようになった。少年は無口で陰気な子どもになり、渡は家族のくくりからはみ出し始めていた。



「中学にあがる頃には親はなんの文句も言わなくなってたよ」

「グレてたって感じ?」

「そこまでわかりやすくないけど。まあ、学校には行かなかったかな」



家族と溝ができ、渡はろくに登校しなくなった。
家にもあまり居つかず、吉祥寺や中野のゲームセンターをうろついた。
知り合った友人たちの後ろにくっついてタバコを吸ってみたり、夜の街を徘徊したり。

たまに家に戻っても家族は何も言わない。腫れ物にさわるように、見て見ぬふりをされる。
幼い渡はそれにまた失望した。
親を試したかったわけではない。ただ、ここまで離れてしまった母親との距離が虚しかった。やがてそれもどうでも良くなった。

< 72 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop