キミ専属
 ブーッ…ブーッ…ブーッ…
次の日の朝、私は自分のケータイのバイブの音で目を覚ました。時刻はまだ4時。
「んもーっ…誰…?こんな朝っぱらに…」
ウトウトしながらケータイを見ると。
「…!?!?」
私はぎょっとした。ケータイには30件近くのメールが来ていた。送り主は全て翔太さん。私は寝転がっていたベッドからガバッと起き上がる。
『え、何!?何かあったのかな?それとも私、今日のタイムスケジュール勘違いしちゃってた!?もう翔太さんのお仕事始まっちゃってるとか!?どうしようっ!!』
ハラハラしながらメールの本文を開いた私はその内容を見て脱力した。
1件目「梅ちゃんやっほー✌︎」
2件目「起きてる?」
3件目「もう寝ちゃった?(´•ω•`)」
4件目「俺さー、明日も梅ちゃんと会えるのが嬉しくて眠れないんだよね」
5件目「明日俺の顔にクマができてたら梅ちゃんのせいだからね」
6件目「…なんてね。嘘だよ♡」
7件目「あーあ、明日が楽しみだなぁ」
8件目「そういえばさ、梅ちゃんの初恋っていつ?」
9件目「あと、今付き合ってる人とかいるの?」
10件目「もしかしてずっと俺一筋とか?( ˆωˆ )ニヤニヤ」
…以下省略。
「なにこれ」
私は思わず呟く。
翔太さんって絶対私のことからかってるよね…。
こんなメールにいちいち返事するのも面倒臭いけど、翔太さんは私の仕事のパートナー。翔太さんの機嫌を損ねることはしてはいけない。自分が担当するタレントさんの精神的な支えになることも芸能マネージャーの役目だ。
私は翔太さんの機嫌を損ねないよう配慮しながら返信を打つ。完成したのがこれだ。
「おはようございます。寝ていたのでメールに気付くのが遅くなってしまいました。すみません。次からは翔太さんもきちんと寝てくださいね。睡眠不足は体に悪いですよ。それと、私の初恋はまだです。付き合っている人もいませんし、欲しいとも思いません。翔太さんはモデルさんとして好きなだけであって、恋愛対象として見たことはありません。」
我ながらお堅い文面。きっとこんなんだから生まれてこの方恋愛したことがないんだろうな…。
私は送信ボタンを押して再びベッドに寝そべった。…すると。
ブーッ
私がメールを送ってから1分も経たないうちに翔太さんからメールが返ってきた。
『返信早っ!!』
メールを開くと、
「わかった。次からはちゃんと寝れるように頑張るね٩( 'ω' )و
初恋まだなんだ。じゃあ俺が梅ちゃんの初恋奪っちゃおうかな。」
と書いてあった。
わあ…顔文字も使ってあって女子力の高いメール…って、そうじゃなくて!!
私の初恋を奪うーーー!?!?翔太さんが!?!?
いや、普通に考えてダメでしょ。マネージャーが自分の担当するタレントさんに恋心を抱くなんて禁断すぎる。
私は『そんなのありえない』と何度も自分に言い聞かせた。
…そんなこと絶対にありえない。
せっかく夢を掴んだのにそんなことあってたまるかあ!!!!!
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