ぬくもり
家のドアを開ける事が躊躇われた。


私は深呼吸すると、家のドアを開けわざと明るい声を掛け部屋の中に入って行った。



部屋の中はムッとこもったような空気がたちこめていた。


私は窓を開け放し、新鮮な空気を部屋に入れる。



司はリビングのソファーに座っていた。


明らかに眠っていない顔。

目の下にはくま。

髭も剃っていないのか、無精髭が顔を出している。



そんな司の姿を見ていると、まるで私が悪い事をしているかのように胸が痛んだ。



落ち着いて話ができるように飲み物を用意している私に、司は矢のように問いただす。




私は少しずつ、司に今まで話せずにいた全てを話だした。



司に女がいた事を妊娠中からずっと知っていた事。



捨てられのが怖くて言い出せずにいた事。



親に虐待されていた事。



優を虐待していた事。



優に怪我させてしまった日の事。



なぜ離婚に踏み切ろうとしているのかも…。




自分の気持ちを全て話した。



司は、ほとんど黙って聞いていた。



時折悲しそうな顔をしながら…。

< 135 / 202 >

この作品をシェア

pagetop