ぬくもり
「まーま?」


少し悲しそうな顔で首を傾け私を見つめる。



「優?どしたの?」


優は何も答えずソファーによじ登り、私の膝に頭を載せゴロンと横になり、私の手を握りながら自分の指を吸い始めた。


もしかしたら、優は私の険悪な雰囲気に気付いて、私を落ち着かせようと側に来てくれたのかもしれないね。



「お話はわかりました。
もういいですか?」



これ以上彼女といると何を言い出すかわからない。


私は彼女の答えを待たずに冷たく言った。



「申し訳ありませんでした。

もう2度と井上さんとはお会いしませんし、連絡もとりません。

奥さんには、本当に申し訳ない事をしたと思っています。

本当に申し訳ありませんでした。」



彼女は堪えきれなかったのか、涙を流しながらそう言い、深々と頭を下げて帰って行った。




彼女はいったい何しに来たんだろう。

何が言いたかったんだろう。



本当はわかっていた。
でも彼女の事を認めたくなかった。



認めてしまうと憎めなくなるから…



彼女は彼女なりに司を守りたかったんだろう。

だから、責められるのを覚悟してここに来たんだろう。



きっと彼女も、傷ついて悩んだんだろう。



彼女だけが悪い訳じゃないのはわかってる。



悪いのは司だし、司が他の女にむいてしまったのは、私にも原因があったのかもしれない。



彼女の事は許せるわけじゃないけど、私の中に渦巻いてる憎みたい気持ちとは裏腹に、憎しみが少しだけ消えていくような気がしていた。


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