ぬくもり
最後の言葉
夕方、幸代からの電話。



もう会わない約束をした彼女が一体どうしたんだろう…


電話の内容を聞いて驚いた。



幸代は今日、美沙に会ってきたらしい…



ずっと付き合ってたのではない、今はそうゆう関係ではない、とゆう誤解を解きたかったのと、美沙に対してのお詫びが直接言いたかったからだと彼女は言った。



俺は彼女の気持ちが嬉しかった。


わざわざ嫌な思いをせず、俺の家の事なんて放っといて幸せになればいいのに…。



そんな幸代の、真っ直ぐな気持ちに突き動かされるように、俺の決意も固まる。



今晩、美沙に離婚すると言おう。



もう、美沙を自由にしてあげよう。



家に帰ると、美沙はいつものように玄関まで優を連れ、俺を出迎えてくれた。



この光景も、後何度見る事ができるんだろう…


俺がそんな事を思った時だった。



「たーいま」


優がニッコリ笑って言った。



俺は何の事かわからなかった。

でも、優は俺の方を向いている。



明らかに俺に向けて言った優の言葉。



「優、ただいまじゃなくてお帰りだよ。おーかーえーり!」


美沙に続いて優が言い直す。


「かーりー」



優が『おかえり』と言ってくれたんだ。

「ただいま、優。」



俺は優の頭を撫でた。


込み上げてくる涙を必死に抑えながら…
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