ぬくもり
「別れた彼女と、偶然会ってしまい連絡を取るようになってたんです。

別に以前のような関係ではないんです。

ただ、食事をしたり、一緒に飲んだり、それだけなんです。

その彼女は結婚が決まり、会うのを最後にしようとゆう日に、美沙がそこに現れたんです。」



「奥さんがですか?」

岡崎さんも驚いた顔をする。



「私もびっくりしました。

その後、美沙と話し合いました。

美沙が彼女の事を気付いてた事、親から虐待を受けて育った事、優に虐待してきた事、美沙の気持ち、全てを聞いたんです。

そして、美沙に離婚してほしいと言われました。」



俺の口からは深い溜め息が漏れる。

またビールを1口飲んで話しだす。



「美沙には、考えさせてほしいと言ったんです。


でも別れたくないなんて言う権利は、私にはないんですよ。

この間、帰ったら美沙と優が寝てたんですよ。

美沙の寝顔見てたら、昔と全然違うんです。

すっかり痩せこけて、やつれてて、苦労させたんだなって思ったら、あいつの寝顔見てるうちに、段々泣けてきちゃったんですよ。


その時に、もう美沙が苦しむのは見たくない。

美沙を楽にさせてあげたい。

あいつの言う通り離婚しようって決めたんです。」



美沙の寝顔が浮かんで、俺はまた涙がこみ上げてくる。



「その時、優が起き出してきて、ちっちゃい手で俺の涙拭ってん…ですよ。」



堪えてる涙が溢れだしそうになり、声が震える。



「こんな、最低などうしようもない俺の涙拭ってくれて…

美沙には、離婚する事話して部屋を見つけ次第出て行く事になってるんですけど、どんどん優と離れがたくなってしまって…」



とうとう、俺の目から涙が零れ落ちていく。

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