ぬくもり
凌君の意外な言葉にちょっと驚いた。



「あんなに可愛がってるのに?」



「だって…
翔が産まれてから、お父さんもお母さんも翔の事ばっかりだしさ。


お母さん死んじゃってからは、翔いっつも泣いてて、僕の言う事なんて全然聞かなくて、わがままばっかりだし、食べ方汚いし、気に入らないとすぐ泣くし、翔の面倒みなきゃなんないから友達とも遊びに行けないし、大嫌いだった。」



いつものお兄ちゃんの顔とは違う、ちょっとだけ拗ねた顔の凌君。



「じゃ、何で可愛くなったの?」



「んーとねぇ…」



凌君がジュースを1口コクリと飲んだ。


開け放たれた窓から気持ちの良い風が、部屋の中を吹き抜けて行く。

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