ぬくもり
「前に僕が次の日学校に持って行く習字セットを、翔がグチャグチャにした事があったんだ。


僕、翔の事凄く怒ったんだ。


翔に『バカ』とか『翔の事なんて嫌いだ』とかいっぱいひどい事言ったんだ。


『翔なんていなければいい』って言った時に、お父さんに初めて叩かれたんだ。

お父さん怒ってたけど、凄く悲しそうな顔したんだ。

でも僕、お父さんにも『大嫌いだ』って言ってベッド入って、そのまま寝ちゃったんだ。


そしたら翔が、夜中に熱だして、お父さんが病院に連れて行ったら、翔がそのまま入院しちゃって、僕が学校から帰ったら誰もいないんだ。


いつもは翔がくっついてきて、うるさくて1人になりたいって思ってたのに、翔の事ばかり思い出すんだ。


自転車乗って翔の病院に行ったら、凄く嬉しそうな顔して僕の事を何回も呼ぶんだ。



翔が何回も嬉しそうに僕の事呼ぶから僕も嬉しくなったんだ。


翔は僕の事が大好きなんだって思ったら、僕も段々、翔の事が可愛くなってきたんだ。」


一気に話して喉が乾いたのか、凌君はジュースを飲み干した。

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