夢で会いたい
トモ君がバスルームから出てくる気配がした。
シーツにくるまり目を閉じる。
・・・・・・・・・・・。
目を開ける。
トモ君の気配がしない。
ヤツはどこへ行った?
むっくりと起き上がり部屋の中を見回すと、ソファーに洗濯物の山が転がっていた!
セミスイートであるまじき光景だ。
「そんなところで何やってるの?」
「あ、起こしちゃった?芽実ちゃんはベッド使っていいよ。僕はここで寝るから」
「そんな、野宿みたいな格好して、風邪ひくでしょう!」
トモ君はバスローブ姿で寝転がり、元々着ていたシャツやデニムを体の上にかけて暖を取っていたのだ(取れないと思うけど)。
新聞紙があったら絶対それ着てた。
「室内だし東京だから大丈夫だよ」
「さすがに『じゃあ、ごゆっくり』なんて寝られるほど無神経じゃない」
「うーん、困ったな」
「困ることなんてないじゃない。なんで事態をややこしくしてるの?一緒にいてってお願いした。一人は嫌なの」
トモ君は泣き出しそうな笑顔を向けてきた。
「僕、芽実ちゃんに何もするつもりないよ」
その一言でトモ君よりもっとずっと、私は泣きたくなった。
「・・・なんで?」
目からはこぼれていないけど、声には涙が混じる。
「絶対にその方がいいから。もし今僕が芽実ちゃんに手を出したらきっとお互いに傷つくよ。それで死ぬほど後悔するんだ。だったら『もったいないことしたなー』って身悶えてる方が数百万倍マシ」
何かのネジがはずれている私より、私のことを大好きなトモ君が冷静にそう言うんだから、きっとそうなんだろう。
私だって別に今体を求めているわけじゃない。
ただトモ君の体温が欲しいだけ。
トモ君と一緒にいたいだけだ。
「じゃあ、何もしないで一緒に寝て。一晩中身悶えててよ」
「芽実ちゃんはどこまでも僕に厳しいね」
そう言ってトモ君は先日と同じようにふわんと私を抱き上げた。
やさしくベッドに下ろされて、続いてスルリとトモ君が入ってくる。
私がモゾモゾと身を寄せると予想した以上に強い力でぎゅうっと抱きしめられた。