向日葵の天秤が傾く時
「いつまでかかってんだよ。」



音沙汰無い阜紆奢を蛞拓は呼び出していた。



「そう焦るな。こっちにだって色々準備があるんだ。苛つくのは糖分不足が原因じゃないのか?ほら飴でも食って落ち着け。」


「チッ。やっと手に入れて傍に置いたのに、あいつのせいで行方くらますわ専務争いにも遅れをとるわ、予定が狂って胸糞悪いんだよ。」



本部へ異動の時に巫莵をいとも簡単に引き抜けたのは人事部にいた同期の上司が頭取と仲が良かった為である。



そして、蛞拓が常務にまで大抜擢され出世コースを歩めた要因は巫莵の頑張りがあってのこと。


将来の頭取候補と名高かったはずが現在落ち目なのも巫莵がいないからで、蛞拓の言い分もあながち間違ってはいない。



「大体、あいつが俺と巫莵に横やり入れたからこうなったんだ。」


「まあ、その同期の上司は横恋慕されたことを理解してくれて、お前は処分無しだったんだろ?いいじゃないか。」



巫莵に惚れた同期は蛞拓から奪おう……いや、守ろうとして揉めた上に左遷されたというのに、蛞拓に自覚がまるで無い。


ただ、巫莵や周囲を考えないまま先走った為、同期にも騒動原因の一端はあるのだが。
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