向日葵の天秤が傾く時
「そりゃ神様だってちゃんと分かってるからな、俺の欲しい物を取り上げたりなんてしないんだよ。」



地位も名誉も。


そして、巫莵さえも?



「事務所の名前だって、あのガキが持ってた封筒を俺が覚えてたからすぐに分かったんだろ。俺には時間が無いんだ、早く連れ戻せよ。」



忌々しそうに吐き捨てると、舌で転がすように甘さの余韻を楽しむどころか噛み砕き、事務所を出ていった。



「ったく、唯我独尊もいいとこだな。分不相応な矜持だけは持ち合わせてるんだから始末が悪い。」



昔から誰かの調整役で損な役回りを、金になると感じたのはいつ頃だったか。


偽られた事実を知らぬふりするが仏で、隠された真実は言わぬが花な世界だ。



「憎まれっ子世にはばかるとよく言ったもんだな。」



狄銀行は大手だ。


阜紆奢だって引き受けたのは嫌々だったが、事務所の方針に従い成果をあげれば拳煙からの評価は上々、査定にもプラスに働くと思った。



「彼女には悪いが、旅に道連れもこの世に情けも無いんだ。」



関係を裂かして、時間を割かして、ナニを咲かす?


自分の都合しか考えない阜紆奢も、実は共犯者なのかもしれない。
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