ボルタージュ王国の恋物語〜番外編〜
(「エルティーナ様を、ただのお飾り。子供を産む道具のように言うとはな、悪気がないのだろうが、殺意がわく……」)

「ジルベールの言いたい事は分かった。私は絵姿の令嬢は知らない。会った事もない。だがな、私に話すのではなくレオンに言うべきだろう。
……私には関係ない」

「アレン、しらばっくれるな。関係ない訳がない。あの場で絵姿を見せたのは婿探しか。……まだ少女だから護衛騎士探しか。どちらかだろう。そして、レオンのあの態度、どう考えてもお前が第一候補だ。
だから、釘を刺しにきた。俺はあの子が欲しい。恥も承知。レオンから護衛騎士の話が出たら断ってほしい。頼む、、、」

ジルベールはアレンを見つめた後、静かに頭を下げた。ジルベールの真剣な態度には、心を打たれはしたが「Yes」とは言えない。
エルティーナ様だけは、彼女だけは譲る気はない。自分の全てをかけて、命を削りここまで来た。

それとは別に、ジルベールに対し誤魔化さないのが、騎士の理だともアレンは感じた。

誠実な気持ちで返答するからにはと、持っていたスプーンを置いて、ジルベールを見据える。

「答えはNoだ」

「アレン!!!」

「ジルベール、これだけは譲れない。レオンがあの令嬢の護衛騎士に私を推薦するなら、絶対に断らない。
申し訳ないが、……出会った事はないが、彼女が誰かは知っている。婿云々では、あの令嬢自身に興味はないが、護衛騎士としてなら断らない。すまない」

ジルベールに対し、今度はアレンが頭を下げる。


「………そうか。分かった。
……変な事を話したな……忘れてくれ。気にしないでいい」

「ジルベール、別にあの絵姿の令嬢ではなく。今すぐ結婚願望がある令嬢を、射止めたらいいのでは?」

アレンは、落ち込むジルベールに理由を聞きたくて、終わった話をもう一度掘り返す。

「……俺の年齢的に、それが一番いいのは分かっていても、騎士見習いがやっと終わったところの若造が、いきなり貴族の舞踏会や晩餐会に出席は出来ない。……ツテがないとな」

苦笑しながら、前髪を上げるジルベールに、アレンは軽く笑みを浮かべる。
初めて見るアレンの柔らかい表情に、ジルベールも静かに聞いていたエルマンも、魅入られ固まってしまう。

「では、私の名前を出せばいい。騎士の称号を貰うのはひと月後だ。
それからだと遅い。社交界シーズンは今から始まる、もう何処で開催するか、ある程度は決まっているだろう。すぐに、舞踏会や晩餐会に出席の意向を伝えたらいい」

アレンの協力的な態度に唖然とする二人。

「……いいのか??」

「ああ、構わない。ジルベールの騎士としての腕も頭脳も分かっているからな。是非、ボルタージュ国に貢献してほしい」

「なんか、上からな言葉だね?……まぁね、レオンもアレンもそれなりの身分ですって雰囲気が隠しきれてないからね。何を言われても腹が立たないし、驚かない」

エルマンがにっこり笑いながら、少し冷めた紅茶に口をつける。
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