強引上司にさらわれました

神の手って。
テレビで紹介って。
名医じゃないか。

そんなすごい人の息子と結婚するなんて……。
驚きで口を鯉のごとくパクパクさせていると、美優はクスクスと笑った。


「……ともかく、おめでとう、美優」


そういうのがやっとだった。


「ありがと。泉もきっとすぐだよね」

「そんなわけないでしょ」


やっと想いが通じ合ったばかりだ。
お父さんとお母さんにそんな報告をしたら、『うちの娘は尻軽女だった』なんて嘆かれかねない。


「今夜は二人の未来を祝して、なにか美味しいものでも食べに行こうか」


出かける準備をしようと思ったか、美優がテーブルに手を突いて立ち上がる。


「あ、ごめん。今夜は……」


それを申し訳ない気持ちで引き留めた。


「誰かと約束でもあるの?」

「ううん、そうじゃなくて。今夜のうちに課長の部屋に戻ろうかなって」

< 206 / 221 >

この作品をシェア

pagetop