強引上司にさらわれました
神の手って。
テレビで紹介って。
名医じゃないか。
そんなすごい人の息子と結婚するなんて……。
驚きで口を鯉のごとくパクパクさせていると、美優はクスクスと笑った。
「……ともかく、おめでとう、美優」
そういうのがやっとだった。
「ありがと。泉もきっとすぐだよね」
「そんなわけないでしょ」
やっと想いが通じ合ったばかりだ。
お父さんとお母さんにそんな報告をしたら、『うちの娘は尻軽女だった』なんて嘆かれかねない。
「今夜は二人の未来を祝して、なにか美味しいものでも食べに行こうか」
出かける準備をしようと思ったか、美優がテーブルに手を突いて立ち上がる。
「あ、ごめん。今夜は……」
それを申し訳ない気持ちで引き留めた。
「誰かと約束でもあるの?」
「ううん、そうじゃなくて。今夜のうちに課長の部屋に戻ろうかなって」