強引上司にさらわれました
片方の耳を押さえながら、ひとつひとつ目覚まし時計を止めていく。
ようやく最後を止めたものの、耳がキーンとしてクラクラした。
「課長! 課長ってば!」
声を掛けてみたけれど、瞼が動く気配はまるでなし。
考えてみれば、八個の目覚ましが一斉に鳴っても起きないのだから、私の声で目覚めるはずがない。
うつ伏せになっている課長の肩をユサユサと揺すってみる。
「課長! 朝ですよ!」
それでも反応なし。
こうなったら……。
キッチンへ向かい、フライパンとおたまを探し当てる。
それを両手に持ち、課長の元へ戻った。
大きく息を吸い、フライパンとおたまを高く掲げる。
そして、力任せにカンカンカーンと叩き合わせた。
それをしている私の脳みそのほうが、驚いて飛び起きた感じだ。
とばっちりもいいところ。
続けざまに打ち鳴らしていると、ようやく課長がモゾモゾと動き始めた。
目覚まし時計とは違う音が功を奏したのか、仰向けの状態でこちらに顔を向ける。
そこでやっと課長は目を開いた。