強引上司にさらわれました

「……なんの騒ぎだ」


かすれた声で私を睨む。


「それはこっちのセリフです。この目覚まし時計、いったいなんなんですか? 何事かって飛び起きたじゃないですか」


私が苦情を申し立てると、課長は毛布の中で大きく伸びをして起き上がった。
ハラリと落ちた毛布から、彼の裸体が現れる。

『キャー』なんて悲鳴を出すような歳ではないし、なにより驚いて体が硬直してしまった。
しかも、そのボディだ。
ほどよく引き締まり、私の角度からほんのすこし見えるお腹は、まさかの“シックスパックス”じゃないかと思えるような隆起の仕方をしていた。

スーツを着ている普段の姿は華奢で、まさかそんな逞しい体を隠し持っているなんて想像もできない。
そのギャップもあって、ドキドキしてしまった。


「か、課長……は、裸で寝てるんですか?」


平静を装ってみたのに、情けなくどもる始末。


「パンツは履いてる」


気だるい様子がなんだかやけに色っぽくて、目のやり場に困ってしまう。

そんな私に気づくこともなく、課長は静かになった目覚まし時計を見て、「一台増やしてもダメか」とひとり言を呟いた。

改めて端から順番に数えてみれば、なんと九台もの目覚まし時計。
それだけの数が一斉に鳴ってもピクリともしないのだから、朝は相当苦手なんだろう。

手を伸ばして床に落ちていたパーカーを羽織り、課長がベッドから下りようと足を出す。

さすがにパンツ姿は見られないと、そそくさとその部屋を出た。

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