弱虫なボク~先生と生徒の距離~
自分でも分からない。


どうして、叫ぶようにそう言ったのか…。


普段、冷静な僕が。


しかし、高田香奈も突然の僕の豹変に驚きを隠せないみたいだった。


いつからか、高田香奈の目に涙が落ちていない事に気づく。


「やっと、言えたね。」


泣いて、怒って、そして、今は、そう言って高田香奈は笑う。


季節が巡るように、高田香奈の表情も忙しく巡る。


「は?何言ってんだよ!」


ワケの分からない事に、苛立ち、言葉を荒げてしまう僕は、完全に我を失いかけている。


「ちゃんと、言えたんだよ。井手君。」


ニコっと、さっきよりも微笑み、高田香奈は、腐食したベンチの後ろに立つ、大きな一本の木の方へと歩いていく。
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