ギター王子とピアノ姫
「千葉さん……手……」
「俺、Melloちゃんが作った曲
大好きだよ!!」
「……」
『大好き』
そんな言葉……滅多に言われないから
なんか恥ずかしいんだけど……。
才能も実績も無い私が作った曲を
『大好き』って言ってくれる人が居る。
それは、あまりにも贅沢すぎる幸せだった。
「俺、思うんだけどさ……売れる曲だけが
良い曲だとは限らないんじゃないかな」
「へ?」
いやいや、良い曲だから売れるんじゃないの?
「例えばさ。歌手やアイドルやバンドの曲で
『隠れた名曲』ってあるでしょ?」
「あ……それって音源化されずにライブだけで
披露される曲とかのこと?」
「そうそう!CDとして残ることは無い曲でも
目の前で見て聴いたファンの心には
しっかり残ってる。そして聴いた人の
心の支えになるんだ」
ファンの心に残る……。
「もちろんオリコンで上位になれたら
嬉しいし、音楽の歴史に名を刻みたいって
俺も密かに思うよ。でもね……」
何よりファンの心に残る曲を作りたい。
そう言って千葉さんは
すごく……すごく嬉しそうに微笑んだ。