ギター王子とピアノ姫
◇◇◇◇◇
テレビ局。
「わー……。テレビ局って
全然来ないから少し緊張……」
「あはは。確かに……『顔見せ一切無し』で
売ってる朝音にとっては、そうよね」
そうなんだよね。
私は
顔見せ一切無し
本名非公開
年齢非公開
……で売ってるシンガーソングライターだから。
だから学校の人たちも
千葉朝音=Mello
という真実を知らない。
「おーーい!」
「あっ。社長!Mello連れて来ました!」
「おはようございます!」
こちらに手を振る社長と合流し
私と鈴木さんは頭を下げて挨拶をした。
「社長。Melloに会わせたい人はどちらへ?」
「こっちだよ。この楽屋の中に居る」
社長がドアをノックすると
中から「はーいっ」と返事が聞こえた。
ガチャッ
「失礼しま……」
「わぁぁぁっ!!」
「えっ!?」
突如、私の視界に飛び込んで来た
キラキラ笑顔の正体に
私は目を真ん丸にすることしか出来なかった。
「ち……千葉笑大さん……!?」
「嬉しいっ!俺のこと知っててくれてたんだ!」
アイドル並のキラキラスマイルで
私を出迎えてくれたのは
「改めまして、千葉笑大です!
よろしくお願いします!」
先日、ラジオで
私のファンだと言ってくれた
人気若手俳優の千葉笑大さんだった。