不器用な二人はあまのじゃくの関係
「優梨!!!」

「あ、おは…顔怖っ!」

「遥太朝練してるって知ってたでしょ!」

「えぇ!知ってたけど杏奈ならくそ早い時間にでも起こしに行くと思ったんだけど…はは」

「美智子さんに大丈夫よって言われたよ、もう」

「ごめんごめん」

そう言って優梨は顔の前で手のひらを合わせる。

「いっぱいアドバイスくれたから許す。」

ぶすくれた顔だったけど優梨を許した。
いろいろ感謝してるからね。



「あの、川井さん。ちょっといい?」

「あ、はい。!あ、梶原くんおはよう!」

「うん、おはよう。優梨さんもおはよう。」

「おはー」

いきなりの梶原くんで驚いた。

「何か用かな?」

私が尋ねると梶原くんは少し恥ずかしそうにうつむく。
梶原くんの返事を待っていると、少し間を置いて梶原くんが口を開いた。

「…ちょっと来てくれないかな?」

「あ、私?」

私に何の用だろうと聞き返してしまった。

「うん、いいかな?」

「うん、いいよ!じゃあ、優梨ちょっと待ってて!」

「はいよ〜」





私は梶原くんに連れられて教室の外の廊下に出た。
梶原くんは小さな声で「相談があるんだ」と言った。
私も小さい声で「なに?」と答えた。
二人とも声が小さいから自然に顔が近くなる。

「あのさ、俺、気になる人がいるんだ」

「え!…っ」

いきなりの告白に一瞬大きい声を出してしまったけど、やばいと思い口を手でふさいだ。

「ごめん、それで?」

私はまた小声で返す。

「その気になる人が…実は…」

「うん。」

「…優梨さんなんだ」

私は口を手で必死に塞ぎながら大声で驚きの声を発したいのを我慢した。

「え、な、なんで!?」

「よくわかんないけど初めてなんだ、こんな風に思うの。理由はあるけど言葉でまとめられるほど経験ないからうまく言えないけど、でも他の女子とは違う気がするんだ。」

「うん、うん!わかるよ!!」

「川井さんもいるの?こういう人。」

「うん、いるんだ。まぁ、私の話は置いといて、梶原くんに協力するよ!私!」

「ありがとう!このことは内緒にしてもらえないかな。やっぱり気持ちが固まったら自分で言いたいから。」

「うん、わかった!内緒ね!約束する!」

「自分でできるところは自分で教えてもらうけど、少しだけ優梨さんのこと教えてくれないか?」

「了解だよ!任せて!えっと、まずは…【キーンコーンカーンコーン】

「あ、チャイム」

「鳴っちゃったね(笑)」

二人で顔を見合わせて苦笑いする。

「じゃあ、SHRが終わったらね!」

「わかった。ありがとう。」

話口調は照れくさそうに優梨のことを話していた口調からいつもの冷静な梶原くんに戻っていた。
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