不器用な二人はあまのじゃくの関係
トラブル発生です。

1時間目が始まるぎりぎり前に学校に着いた。
優梨には「昨日の余韻でねむれませんでしたとか言わないでよ〜?」とからかわれた。
そんなこと……ない、もん。



実は遥太と一枚だけふたりで撮った写真をずっとながめて……図星だけど余韻に浸っていて寝るのがいつの間にか遅くなってしまったのだ。
男の子とふたりで写真を撮るのは初めてで頭がまわらなくて水族館の暗闇で撮ったから画質があまりよくない。明るいところで撮ればよかったと少し後悔している。
でも恥ずかしくって「もう一枚撮ろう」って言えなかったのだ。
次ふたりで撮れるのはいつだろうか…
クラスが違うから遠足で近くで会えなかったように修学旅行でも会える可能性は低い。となると卒業式か…でも、もし、付き合ってたら……なんてね(笑)



それからはいつも通り午前中の授業は首をカクカクさせながら聞いてお昼休みになった。
お弁当を食べようと優梨の席に移動する。
やはり私はまだ成長期の真っ只中なのだろうか。今日も寝坊遅刻なのに授業中も睡魔と戦っていたし。てか毎日だし。

「カワイ アンナさん、いる?」

私が自分の睡魔のことを考えていたら、教室の後ろのドアから私を呼ぶかわいらしいよく通る声がした。
その子の大きいけど下品ではない、むしろ上品でかわいらしい声にクラスが一瞬静かになる。「あ、はい。」と私が小さく手を挙げて返事をするとまたガヤガヤといつも通りのにぎやかな教室に戻った。
私に気づいたその子は目的の人物を見つけてニコッと嬉しそうに笑い、小走りで私の方へ駆け寄ってきた。
よく見ると、私の知っている顔だった。

サクライ ユメカちゃん……

この間の朝の出来事がフラッシュバック
私の表情は一気に曇る。

「あのね、私、2組の櫻井 夢花って言うんだけどぉ、」

いやだ。

そんな声どこから出るのかと逆にレクチャーしてほしいくらいの甘ったるい声で話す櫻井さん。
なんだか、嫌な予感がする…

そんなことを考えている私をよそに話を続ける櫻井さん。

「ときどき廊下で見るんだけど、めっちゃかわいいなぁーって思ってたのぉ♡お話、できるぅ?」

みたらし団子のタレみたいにドロドロ甘々な声で話してくる櫻井さんの話し方は異様で恐怖でしかない。この間の遥太と話していた声も甘ったるかったけどこんなにわざとらしくなかった。なにかある気がするよ。
不安な私はちらっと優梨を見ると、優梨もなにかに感づいたようで私と目を合わせたまま首を小さく横に振る。
コクっと頷いた私はきっと苦笑いなのだろうけど、なんとか笑顔を作って

「お昼ご飯食べるから…」

『行けない』と続けようとした私の声をさえぎって櫻井さんは

「来てくれないかなぁ?」

うるうるの瞳でこっちをみる櫻井さん。
実力派女優としていますぐにデビューできそうなくらいの今にも泣きそうな表情で見つめてくる。
こんなの…

「…わかった。あはは」

私みたいな人間は断れませんよぉ。
「はぁ!?」という顔で優梨が私を見ていることなんて優梨の方を振り返らなくても視線で痛いほどわかる。
でも、こんな風に言われたら断れないじゃんかぁ。

「ありがとぉ〜♡」

とびきりかわいい笑顔をこちらに向ける櫻井さんに苦笑いすることしかできなかった。

「お昼ご飯はやく食べれるように急ごっか!」

私の腕を引っ張り小走りで私の前を進もうとする櫻井さんに私は「うん」と言って従うしかなかった私はこれから何が起こるのかの不安で後ろからの人の気配に気づくことができなかった。














< 43 / 70 >

この作品をシェア

pagetop