不器用な二人はあまのじゃくの関係

着いたところは旧校舎の暗い階段。
あの、初めて来たから帰り方わかんないんですけども…

「あのさぁ、川井さん。」

さっきとは打って変わって低くて怖い櫻井さんの声に驚くというよりも関心する私。
本当に女優向いてるよあなた。(笑)
っていうか………なんで怒ってるの!?
私なにかした!?

「おい、どけよ。」


ドンッ


左肩をいきなり押されてよろける。

「ちょっ」

ここ階段なのよ?変に踏み外したらもうバッキバキよ?わかる?あ、ぶ、な、い、の!!!

って3人に増えたんですけど…あのぉ誰でございますかー……
マンガの世界の話だとおもってたのにまさか私がこんなシチュエーションに出くわすとは。
逆に冷静になる私を櫻井さんが声を荒らげてまくし立てる。

「アンタ何様のつもり!?どこポジ!!?昨日遥太と一緒にいたらしいじゃない!!!
気安く近づいてんじゃねぇーよドブスがぁ!!」

ええぇぇぇぇー!?めっちゃ怒ってるんですけど。

「私は遥太の幼なじみだけど…なに?」

どう返答したら彼女の怒りを抑えられるのかわからないので控えめに言って出てみる。
実際ちょぴっとイラッとしてるけどここで私までキレたら話が進まなくてお昼ご飯が食べられなくなってしまいそうなので自分の怒りはおさえる。が、彼女の怒りはおさまるどころか火がついたように更に怒りだし、鬼の形相だ。
こ、怖い……

「はぁー?幼なじみが出しゃばってんじゃねぇーよ!!どーせ、幼なじみは幼なじみなんだよ!絶対、夢と遥太の方がお似合いだから!ドブス!!!」

なぜか櫻井さんの取り巻きのひとりがそんなことを言ってくる。櫻井さんは「そうよ!」みたいな顔をして腕を組む。
ドブス好きねぇあなたたち。さっきっからそればっかりじゃないのよ(笑)
櫻井さんの話の内容を知り、そんなことかと呆れるが、一方的に言われ続けるとやはりイライラする。なので少し言い返すことにした。

「んー、あなたたちさ、」

とりあえず私が言いたいことは…

「ドブスドブスうるせーよ。」

そう!これ!特別かわいいわけではないけどそんなにブサイクでもないもん!ちゃんと告白だってされたことあるんだから!………一回だけ(笑)
少し睨みながら言い返した私に櫻井さんたちは驚きを隠せないようだ。
きっと少女マンガの読みすぎなのだろう。少女マンガのヒロインは言い返さないで黙って従ってしまうものだ。
だけど、私は言い返したのでこの後の展開がめちゃくちゃになったのだ。
あー、お腹が空いてきた。はやくご飯ー!!!
イライラした私は櫻井さんたちへの反論を続ける。

「3対1て私のこと遥太から引き離そうとしたみたいだけど、そんなことして意味ある?私が遥太から離れたからってこんなことする性格ドブスな女だって遥太が知ったら逆効果なんじゃない?私はあなたたちに気を遣う必要がないからこういうことすぐチクっちゃうかもよ〜?」

「……」

櫻井さんたちは黙ったままだ。

「そんな意味ないことしてる暇あったら少しは性格なおしたらどうなの?教えてあげるけど、私に『ドブス』って言ってる時のあなたたちの顔すっごくひどかったよ。正直ブサイクだったわよ。」

「なっ!」


ダッダッダッダッダッ


「誰か来たわ。夢、戻ろう?」

「うぅ…うぅう」

「…夢!」

櫻井さんは私に反論されまくりで泣きそうになっているというかほぼ泣いている。
言い過ぎちゃったかも…
誰も動かないまま走っている足音が近づく。

「…杏奈!!!」

「遥太!?」

そこには「ハアハア」と肩で息をしている遥太の姿が。
なんで遥太が…!?

「櫻井!お前……って、え?!」

きっと私じゃなくて櫻井さんが泣いているのを見て状況がつかめていないのだろう。
それに気づいた櫻井さんの取り巻きのひとりが嘘をつく。

「夢が、川井さんにいじめられてて…私がさっき駆けつけたときには泣き崩れてて…」

「あぁ?」

遥太は恐ろしく低い声を発した。
もしかして、私がやったと思ってるの!?

「櫻井に杏奈が連れてかれたこと聞いてんだよ。それに、杏奈はこんな汚ぇことしないんだよ。櫻井がなんで泣いてんのかは知らないけど今のお前の発言が嘘だってことはわかった。」


ドキッ


遥太…私のこと信じてくれて………

「さっさと失せろよ。」

こ、怖い。口が悪いようですよ…。

「ゆ…め、行こ?」

櫻井さん達はビクッとしてガクガクとおびえておぼつかない足を動かして去っていく。






「杏奈…」

遥太はすごく優しくて私のからだを包み込むような声で私を呼ぶ。
かと思ったらぐわっと怖い顔を近づけて怒りだす。

「お前!何かされてたらどうすんだよ!なんでもかんでもノコノコついてってんじゃねぇよ!」


ぎゅうーっ


「ひゃっ」

怒鳴ったかと思ったら私を強く抱きしめて「よかった」と言いながら私の頭をなでる。
ねぇ…好きだよ。
助けに来てくれてありがとう。
そういう気持ちをこめて抱きしめ返そうとしたら遥太はバッと私から離れて頭の上にハテナマークを浮かべて聞いてくる。

「なんで、櫻井泣いてたんだ?なんか言ったのか?」

それ、今聞く!?
めっちゃいいムードだったよね??
少女マンガだったら「なんで助けに来てくれたの?」「そんなの、お前が好きだからに決まってるだろ」的な感じになって……って言うのがお決まりでしょうが!!!
でも遥太っぽくて笑えてくる。
例えが少女マンガだらけで知識少ないというのは気づかないことにしてください。テヘ

「あぁ、あれね。『ドブス』連呼しながら『遥太に近づかないでー』って言ってきてムカついてちょっと言い返しちゃった(笑)」

「なにを言い返したんだか(笑)こわいこわい」

「もー!いいじゃん!」

「ほんっとキレたらこええの変わんないな(笑)まぁ、なにもなくてよかったよかった!」

遥太は微笑みながら私の頭をなでなで。
嬉しくなって「えへへ」って笑ったら遥太は顔を真っ赤にしてしまった。

「どうしたの?」

なにかあったのだろうか。

「はぁ。どこがドブスだよ。かわいすぎ……あ!」

「なっ!」


かぁぁぁぁぁっ


小声で独り言のように言った遥太のセリフは向き合って息が少しかかるくらいの距離に座っているため全て聞こえてしまった。
ふたりとも顔が真っ赤でゆでダコいっちょあがりってかんじだ。


「も、戻るぞ!」

耐えきれなくなったのか遥太はぷいっと顔をそむけて先に歩き出す。

「ちょっと待ってよ!」



そんなこんなでトラブルは解決(?)しました!









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