不器用な二人はあまのじゃくの関係
「いや、ここどこ…?」
泣きながらだったので人が通らなさそうな道を選んで来たが、立ち止まってみるとどこに着いたのかわからない。
遥太の言っていた最新設備搭載っていうのは建て替えた後にいろいろな機能を追加したかららしい。私たちがいつも生活しているのが新校舎。入学してから知った。
そしてここはきっと旧校舎。
ほとんど使う人がいないのだろうから蛍光灯はほぼ抜かれていてところどころに灯りがついているだけだ。薄気味悪いな。
やだなぁやだなぁ。
勢いにまかせて走ったものの恋愛小説のように誰かが来てくれるわけでもたどり着いたら大好きな人がいるわけでもなんでもない。(そりゃ人がいない道通ったんだから見つかるわけがない)
とにかく、帰らなきゃ……
待てよ…
旧校舎ってこの間来たじゃん!
あの階段!
あそこに行けばその後の帰り方はだいたい覚えてるし、最悪階段まで行けなくてもその前に見たことある道に行けるかも!
私ったらさえてる〜♪
「……とは言ったものの、ここどこぉ!!!」
私は最初の場所から動かない方がよかったらしい。
今の状況を杏奈はもちろん知らないけど、作者は知ってますよ。どんどん新校舎から離れて旧校舎の端まできてしまっているのだ。
「うぅ…さすがに誰もいないよね。
誰でもいいから助けてください、お願いします!」
私が必死におまじないのように唱えていると声がした。
「誰?」
ひぃ!
………でもあれ?聞いたことあるような…
「……煌大くん!?」
「いや、違うよ。」
「へ…?じゃあ、誰…ですか?」
知らない人だったのでとっさに敬語をつけてしまう。
優しく微笑んだ彼は私に手を伸ばす。
でも私の体にその手は当たらずにすり抜けた。
もしかして……もしかして………
「幽霊!?!?!?」
一気に恐怖が押し寄せた。
どうしよう……幽霊と会っちゃったよ……逃げなきゃ…!
「怖がらないで?あ、いやそりゃ生身の人間にとっちゃ怖いことか」
少し寂しそうに苦笑いする幽霊さんは煌大くんにそっくりだけど少し煌大より大人っぽい雰囲気を出している。なんてイケメンなんだ…
「あのね、僕は…あれ?いつ死んだんだっけ。……んまぁ、結構ここをさまよっているわけなんだよ。何かを探しているみたいなんだけど思い出せなくてさ。でも死んだ後目を開けたらこの図書室にいたんだ。だからきっとここに探し物があると思って残ってる。僕はここの高校3年のときに死んだ。交通事故で。卒業式の日の朝にトラックにひかれちゃった。」
かなりデンジャラスな過去をコミカルな身振り手振りで話す幽霊さんは変わり者だ。
探し物ってなんだろう……
「君はきっと迷ってここに来たのかな?1年生だね?」
「あ!はい!」
「じゃあ新校舎まで案内するよ。
新校舎の中の構造はわからないけどこっちの校舎だったらずっといるからね。」
優しい顔で微笑む幽霊さん。
“ずっといる”
見つからないままだからずっとひとりでここでさまよっているんだ。
寂しいよねそんなの。
「あの!私、いろいろあって教室戻りづらいので……探し物、手伝ってもいいですか?」
「え?本当に!?それはありがたいよ!僕、こんなんだろ?だから本に触れなくて床とか隙間とかしか探せなかったから助かるよ!僕は01生の橋本 良樹(はしもと よしき)だ!」
01生って…この学校の一番はじめの生徒……
私は68生。
橋本さんは65年ひとりでさまよっているんだ。
助けてあげたい。
「私は68生の川井 杏奈です!よろしくお願いします!」
探し物、絶対見つけなきゃ!!