距離0センチ
今このタイミングで、立花君に顔を見られたくない。
それに、私が立花君の顔を見れない。
浴衣のせいで、狭い歩幅でスタスタと前を歩く。
「紫乃先輩」
優しく名前を呼ばれたと思ったら、ギュッと手を握られた。
「人多くなってきたし、はぐれないためにも手繋いでいいですか?」
「……もう繋いでるくせに」
「ふふ、そうですね。
嫌だと言われても離すつもりはないですよ?」
これが忠犬という名の小悪魔だ。