オオカミ専務との秘めごと
それから幾日かが過ぎた金曜の夜、食事を済ませて両親の写真に手を合わせていると、ピンクスマホがメールの着信を告げた。
『明日午後二時、迎えに行く』
久しぶりの大神さんからの依頼メール。
彼に思う人がいることを知った日から今日までに、もう気持ちの整理はついていてかなり落ち着いている。
彼に会っても、心乱れることなく、レンタルのお仕事ができるだろう。
彼に解雇通知されない限りは、“良”評価にステップアップするよう頑張れるくらいにはなった。
明日は、張り切らなくちゃ。
そして翌日の土曜日。約束の時間ぴったりに玄関のチャイムが鳴った。
ドアを開けると仕立てのいいスーツを着た大神さんが立っていて、あまりの神々しさに目がつぶれそうになった。
久しぶりの雲上オーラは、貧乏人には強烈すぎる。
「お、お久しぶりで、ございます」
くらくらしながらも挨拶すると、大神さんは私の手をそっと握って支えた。
「仕事関係で忙しくて、なかなか連絡できなかった。すまんな」
「いえ、ちっとも。お仕事ですから、お構いなく」
「お前なあ。あんまり、あっさり言われても俺は傷つくんだが」
大神さんは眉を下げて苦笑いをしている。
そういえば、以前『悩ましい』とも言っていたのを思い出した。
どう反応すれば正解なのかよく分からず、結構難しいなと頭を捻る。
彼よりも、私のほうが悩ましいと思う。
そんなこと彼には言えないけれど。