オオカミ専務との秘めごと
私以上に興味津々な様子で身を乗り出した佐奈。
三人がテーブルの上で顔を寄せ合う形になり、佐奈は声のトーンを落とした。
「で、どうなったの、塩ちゃん。まさか、成功?」
「見事に撃沈です」
「撃沈。なのに、どうして塩ちゃんは元気ないの?」
「専務の答えが、もう誰にも可能性がないものだったんです」
塩田さんは一呼吸おいて、ゆっくりと一つ一つの言葉を噛みしめるように言った。
「“俺には心に決めた女性がいる”と・・・」
予想できないことではなかった。
専務は御曹司で、既に決まったお相手がいる可能性は十分にあるのだから。
だから、専用のピンクスマホを私に持たせて、何かあれば処分すると言っていたんだ。
心の隅で分かっていたことで、好きになったらいけないと自制して、仕事上の関係に徹するようにしていた。
なのに、何でこんなに胸が痛いんだろう。
「菜緒、泣かないで」
「神崎さん・・・」
知らないうちに涙が溢れて、心配そうに見る二人の顔がかすんで見える。
「大丈夫、元々が雲の上の人だから、叶うなんて思ってなかったから、平気。ちょっとびっくりしただけ」
涙を拭いて、笑顔を作ってみせる。
彼と私では釣り合わないんだから、どうしようもなく溺れる前に分かって良かったんだ。
お仕事依頼のメールがないのも、好きな人とデートしてるからかもしれない。
「塩田さん、教えてくれてありがとう」
これで、レンタルの仕事と割り切れる。
お仕事は少なくなるだろうけど、これからも頑張ろう。
そして、彼の結婚が決まったら、邪魔な私は潔く解雇されよう。
そうしっかりと気持ちを固めた。