オオカミ専務との秘めごと

デザインはとてもシンプルで、プラチナの鎖に一個だけ光る宝石が付いている。

小粒だけれどきらきらと極上の光を放つこの宝石は、詳しくなくても分かる。

ダイヤモンドだ。


『これは、お前のものだから』


ピンクパールのネックレスに引き続き、高級な宝石をいただいてしまった。

本当に、こんなものをもらってもいいんだろうか。

雇用主からの支給品と考えるにはどうにも無理があると思えば、おこがましい考えが浮かんでしまう。

けれど、セレブの世界では日常よくあることで、特別な意味なんてないのかもしれない。

例えば、友人の家に遊びに行くときに持つ手土産のような、そんな気軽さなのかも。


私は大神さんのことが、好き。

優しいところも、強引なところも、ちょっとヘタレなところも、全部。

仕事ができるところは尊敬しているし、社交の場で堂々としていた姿はとても頼もしいと思う。

けれど、知れば知るほど、思えば思うほどに、私は不似合いで、アルメな花売り娘だと実感する。

私に伝えたいことが解雇ではなく予想外の別のことだったら、紳士の毒に侵されてボロボロになる前に、彼から離れた方がいいかもしれない。

でもそうするには・・・。


「お母さん、私はどうしたらいい?」


写真の中の笑顔は変わりなく、何の答えももらえない。


「自分で正解を見つけるしかない、か」


彼が戻るのは一週間後。

何を伝えられるんだろうか──。

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