隣の部屋と格差社会。


クラスの劇 金太郎で使う作りかけの衣装を晴日先生に渡すと、今度は晴日先生が海よりも深いため息を吐いてしまった。


それもそのはず。


糸はもうがんじがらめ。


どのくらい糸を出せばいいか調整するのは、不慣れな私にとって結構な難問だ。


短すぎても途中で糸を足すことになるし、長過ぎても今みたいに絡まってしまう。


こういうの下手の長糸って言うんですよ、と言いながらするすると糸を解く晴日先生は、すっかり元通りにして私に衣装を返し、晴日先生のクラスの男の子のダンス一休さんで使う作りかけのカツラを手に取った。


普段はスポーツ万能で子供達とも本気でサッカーや鬼ごっこをして園庭を駆け回っている晴日先生が、こんなに裁縫が上手とは正直驚いてしまった。


もしかしたら、晴日先生って弱点なんてないんじゃないかな。


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