隣の部屋と格差社会。



今からまたレールの上に戻るんだ。


長門さんは私のことを別に好きではない。結婚する理由は、きっと出世のため。


私も長門さんのことが好きなわけじゃない。櫻木製薬のために結婚する。


櫻木製薬を守るために、父が用意した結婚相手と家庭を築いて行く。


私の人生って一体なんなんだろう。



「お父さん、私」


長門さんと結婚する、そう言いかけたとき、今まで閉ざされていた社長室の扉が開いた。


「社長、お客様が来られてます。」

「先方との約束はまだだろう。
あとにしろ。今は大事な話をしてるんだ。」

「しかし…。」

「失礼します。」


言い淀む武田さんのうしろから、誰かが扉をすり抜けてこの部屋へと入ってくる。


「佐渡、さん…。」




それは、すごくすごく会いたかった人。



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