隣の部屋と格差社会。
「お疲れさま。」
ゆり組さんの教室に戻ると、光代先生が優しい笑顔でそう言ってくれた。
もうこどもたちの受け渡しは終わっていて、誰も居ない教室で日誌を書きながら待ってくれていたみたいだ。
「本当にすみませんでした。私がしっかりしてなかったから…。」
「結構あることよ、こういうこと。私なんて、今でもよくあるわよ。」
光代先生は『まあ、あってはいけないんだけどね』と言いながら、取っておいてくれたらしい今日のおやつを差し出した。
手作りにこだわりがあるこの保育園の今日のおやつは、フルーツサンドだったらしい。
「ありがとうございます。」
光代先生の気遣いに、また涙を溢しそうになりながら一口頬張る。
でも、たっぷりの生クリームとフルーツは全然味がしなかった。
「みつる君のお母さんは結構神経質なところがある人だから、そこまで気にしないほうがいいわよ。」
そう、なのかな。
光代先生の慰めの言葉も今は素直に受け入れられない。