あの春、君と出逢ったこと




『……ん?』



いきなりの事で理解できていない私を見て、口元に笑みを浮かべた煌君を見る。



『置いていけばいいだろ、あいつら』



どこか楽しそうにそう言った煌君は、私の言葉を聞かずに手を引いたまま2人から離れて行く。



そりゃあ、早く回りたかったけど!


2人を置いてきたままで良いの⁉︎




屋台の並ぶ所まできた煌君が、何を思ったのかいきなり止まったせいで、背中に思いっきり鼻をぶつける。



『いった……』




ぶつけた衝撃でヒリヒリと痛む鼻を抑えながら煌君から離れる。



『何してんの、お前』



振り返ったのか、私を見ていた煌君がそんなことを言って鼻で笑う。



『煌君がいきなり……‼︎』



鼻で笑った煌君に、私の中のイラつきパラメーターが上昇していき、言い返そうと口を開けた瞬間だった。



『……っ、ゴホッ』




胸が苦しくなり、喉の奥から咳がこみ上げてくるのが分かって口元を手で覆い隠す。




『……栞莉⁇』


しばらくたっても止まらない咳に、さすがに不思議に思ったのか、煌君が私の顔を覗き込見ながらそう言う。




『……大、丈夫‼︎』




ダメじゃん、私。

折角の祭りなのに、こんな事で煌君に心配かけたら。



そう思いながら笑顔を作り、咳を無理やり押し込めてそう言う。



咳が落ち着き、いくつか深呼吸をしながら落ち着きを取り戻す。


……絶対、煌君に不審がられる。


そう思っていた私の頭の上に、何かが置かれて、思わず顔を上にあげる。





『風邪気味か?

あんま、無理すんなよ』





何か、の正体は、私の頭に置かれた煌君の手で、わずかに感じる体温に、思わず顔がほころぶ。




『ん。ありがと‼︎』




『……アホ面。

いつも通りだな』



笑顔でお礼を言った私をけなし、薄く笑った煌君に、眉がピクリと上がる。



……心配、してくれてたよね? さっきまで。




さっきまで、だけど!!!





< 108 / 262 >

この作品をシェア

pagetop