あの春、君と出逢ったこと
変わらず憎まれ口を叩いてきた煌君に、イラつきながらも、思わず笑みがこぼれる。
……煌君なりの優しさと思っとくよ。
『ちょ、置いてかないでよ!』
私の方を振り向きもせず、先へと歩いて行く煌君に後ろから声をかけながら追いかける。
……こんなのも、悪くない。
たまに、だけどね? たまに‼︎
『お前って、本当トロイな』
『煌君はいつもせっかち!』
息耐えながら追いつき、膝に手をつきながら肩で息をする私に、そう毒を吐いてきた煌君。
そんな煌君に、また眉が上がるのを感じて、疲れを忘れ、周りを気にせず言い返す。
『煩え』
『誰のせいよ!』
叫んだ私に、まるで自分は悪くないとでもいうような言葉を発した煌君に、そう突っかかる。
『お前、何食べたいんだっけ』
私の言葉をお得意の無視で交わした煌君に、パラメーターの数字が上がっていくのを感じる。
煌君ってさ、絶対私のイラつくツボを熟知してるよね。
さすが私の天敵。
『……聞いてんの?』
『……え⁈』
何が起こったのか、一瞬わからなかった。
いつの間に後ろにいたのか、私の後ろから顎をつかんで上に向けてそう言った煌君止めが合う。
……待ってください。
私の中で、状況がまだ整理されてない。
煌君は、私の後ろにいて。
で、そのまま後ろから私の顎をつかんで上に向けてて。
肝心の煌君は、私を上から見下ろしてる。
……どんな状況なの、これ。
『パニクってんの? シワ、寄ってる』
そう言って、私の眉間に人差し指を当てた煌君にハッと我に帰る。
この体制は、私がキツイッ!
そう判断して、煌君から抜け出して、数歩分距離をとる。
『凄え、顔真っ赤』
そう言って口元に笑みを浮かべた煌君から、慌てて顔をそらす。
そんなの、自分でもわかってる。