あの春、君と出逢ったこと





『ごめんごめん。聞いてなかった』



軽く謝った私に、煌君が溜息をついた音が聞こえる。


『だろうと思った。

今度こそちゃんと聞いとけ』


『はいはい』


どこまで上から目線の煌君に呆れながらそう返事をしながらも、聞き逃さないように集中する。

今度聞き逃したら、冗談じゃなく煌君に怒られるのが目に見えている。


『俺とお前の2人だけだから』


集中して聞いたのは良いのだけれども。


耳に入ってきた言葉に、思わず携帯が手から滑り落ちていく。


落とした携帯から、煌君がかすかに私を呼んで当たる声を聞きながら、呆然とベッドに座り込む。



だって、今、2人だって。


そんなの、緊張でおかしくなるか、固まるかのどっちかに決まっている。

今の電話でだって緊張したっていうのに。


暫くの間固まっていた私が元に戻り、携帯を拾い上げた時には煌君との通話は切れていた。


少し残念に思った私が何故か光っているディスプレイに視線を落とす。


『……煌君⁇』



見てみると、電話の代わりに、煌君から、一通のメールが届いていた。


きっと、今の状態よ私なんてお見通しで、呆れた笑みを浮かべながら送ったんだろうな。


……それはそれでなんかムカつくけど。


そう思いながら、煌君からのメールを開く。



____________


6時に神社西前

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……うん。分かってたけどね? とてつもなく、煌君らしいんだけど。


少ない‼︎

さすがに顔文字とか絵文字とかは使わないかなとは思っていたけど!




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